Pont Neuf

予告編

INTRODUCTION

4Kリマスターの鮮烈な美しさ!レオス・カラックス 最大のヒット作

「この映画には激しさや美しさ、想像力があふれている!」(スピルバーグ)

レオス・カラックス最大のヒット作『ポンヌフの恋人』は、度重なる撮影中断に見舞われ、完成までに3年の時と膨大な製作費を要し、その不運にまつわるいくつものエピソードによって完成前からすでに伝説と化していた。誰もが完成を疑い「呪われた映画」とまで呼ばれたが、1991年10月に全仏公開されると「フランス映画史に新たな傑作誕生!」と大きな反響を呼びパリだけで26万人という大ヒットを記録。

日本ではシネマライズ渋谷の単館ロードショーで27週ロングランの異例のヒットとなった。ネット時代以前の各種の紙メディアに膨大な記事が掲載され多分野の著名人がコメント。新聞紙上にも「疾走感あふれるめくるめく詩的イメージの乱舞」といった文字が踊り、スピルバーグの賛辞も伝わってきた。作品の持つ熱量が熱狂的なファンを生み、『ポンヌフの恋人』でカラックスの人気は決定的なものとなった。

ほとばしる映像と音のスペクタクル!パリのポンヌフ橋で疾走する、孤独なふたりの究極の愛

『ポンヌフの恋人』は単なるラブストーリーではない。ホームレスの孤独と恋を1カット1カット衝撃的なまでの映像と音で叩きつける強烈なインパクトの作品だ。絵画に喩えるなら、美しい風景画ではなくエゴン・シーレの歪んだ人物像やジャクソン・ポロックの抽象絵画のような非凡なスタイルで描かれた「激情」の物語なのだ。

天涯孤独で不眠症の大道芸人アレックス(ドニ・ラヴァン)と失恋の痛手と眼の奇病による失明の危機で家出した画学生ミシェル(ジュリエット・ビノシュ)。ホームレスとなった二人は、パリの最も古い橋ポンヌフで出会う。愛を告白できないアレックス、過去の初恋に生きるミシェル。カラックスが見つめる二人の感情の軌跡は、失意と闇からはじまり、息もつかせぬスピードで希望と生命へと疾走し、回転していく…!

ゾルタン・コダーイの地の底から響くようなチェロ・ソナタにはじまり、デヴィッド・ボウイ、イギー・ポップ、パブリック・エネミー、そしてリタ・ミツコのエンディングソングに至る絢爛たる音楽の響き。打ち上げ花火、セーヌを疾走する水上スキー、火吹き芸人の炎、めらめら燃え上がるポスター、雪の降りしきるクリスマス…。革命200年記念を祝うパリの街の表情を生き生きと捉えながら、贅沢な光と音のスペクタクルが観客の目と耳を圧倒する。

主演はカラックスの前2作『ボーイ・ミーツ・ガール』『汚れた血』に続き、独特な風貌のカラックスの分身ドニ・ラヴァン。そして『汚れた血』のあと一躍国際派スターとなっていくジュリエット・ビノシュ。3年以上をこの作品に捧げ、すべての絵を描き水上スキーまでやった彼女はカラックスのミューズであり当時パートナーでもあった。

今回の4Kレストア版はカラックスの協力のもとオリジナル35mmネガからデジタルレストアし、撮影監督キャロリーヌ・シャンプティエが修復とタイミングを監修、トマ・ゴデールが音響を担当した。

STAFF & CAST

監督・脚本:レオス・カラックス
撮影:ジャン=イヴ・エスコフィエ/美術:ミシェル・ヴァンデスティアン/録音:アンリ・モレル/編集:ネリー・ケティエ/製作総指揮:クリスチャン・フェシュネール/製作指揮:ベルナール・アルティーグ/製作主任:エルヴェ・トリュフォー、アルベール・プレヴォスト/共同製作:アラン・ダアン

出演:ドニ・ラヴァン、ジュリエット・ビノシュ、クラウス=ミヒャエル・グリューバー

1991年/フランス映画/カラー/125分/DCP/日本語字幕:松岡葉子/配給:ユーロスペース

COMMENT

初めて観た高校生の頃、全てのカットの画と音、そして芝居に、強烈な衝撃を受け、心を奪われました。
果てしない孤独と困窮から逃れるために、お互いを求め合う二人。
その不器用で危うく、暴力的ですらある愛に、何度観ても胸がときめきます。
自分の人生で最も大切で、最も繰り返し観てきた一本。
4Kでスクリーンに蘇った映像で、あのときめきに再び触れられることが、楽しみで仕方ありません。

俳優井之脇海

『ボーイ・ミーツ・ガール』を観てパンクで陰影の強いモノクロ映像で心が踊り『汚れた血』でストーリーに色彩、カメラアングルや編集、音楽に刺激を受け、次の新作を待ち望んでいた1992年、シネマライズで観た『ポンヌフの恋人』の世界に興奮して3回は通い、取り憑かれていた事を思い出しました。
23才だった自分が56才になった現在は、何を感じるのだろうか…。
ミシェルとアレックスの本能が渦巻き、美しく果てしない恋物語に、今も憧れ続けています。

Rockon Social Club岡本健一

あまりにも美しく、切なく、そして苦しく、危うく、力強く、儚く…まぶたに焼きついて永遠に消えることのないラブストーリー。
まさか再びスクリーンで観る事が出来るなんて!
今、また新たにレオス・カラックスの世界が映画館で息を吹き返す!
絶対に見届けなければならない…

俳優・映画監督竹中直人

人生は橋だ。
気が付いたらここにいた。
決して長くはないのに渡り切ることはまだできそうにない。
孤独も徘徊も酒も睡眠薬もここに帰らない理由にはなってくれなかった。
でもあなたを見つけたとき、自分がここにいた意味がわかった。
だから、消えないでほしい。
置いていかないでほしい。
どうか、どこかへ連れ去ってほしい。
そんな青年の炎を、鼓膜に網膜に焼き付けてくれる映画。

歌人木下龍也

恋をするふたりの感情と景色が一緒になって爆発してる。
ふたりが恋をした時に発生する気持ちが、全く抑えることなく体と映像に飛び出していて、恋と体と映画がずっと同期されてる「恋体」映画。

DIVAゆっきゅん

物語が進めば進むほど、2人を祝福するための音楽は用意されなくなっていく。
橋の上で踊っていた2人を社会が決してやさしく受け入れないのと同じように。とても残酷だ。
そしてその残酷さが2人を一層煌めかせるから、音楽がこの映画の壮絶な共犯者であることを思い知らされるのである。

映画音楽作曲家/演奏家世武裕子